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研究テーマの育て方 -研究テーマ設定の時点で『育てること』を強く意識すること-

博士課程

研究テーマが、なんとなく見えてきた。そう思っているのに何故か、不安が拭えません。

一歩前に進む上での、もやもやした不安は、いろいろな角度から訪れます。

先行研究のレビューをするにつれて、『ああ、ただの僕の勉強不足だった』『知らなかった』とうことは、ざらにあります。そうすると、果たしてこの研究の意義や新規性はあるのだろうか、と不安にもなります

また、研究活動(博士論文執筆も含む)は、数ヶ月程度の比較的短いものではありません。3〜4年をかけて、書き上げていく、長い旅になります。そうすると、自分自身が、情熱を持って高いモチベーションを維持して、完走しきれるものでなければなりません。途中で燃え尽きてしまっては、元も子もありません。というか、不幸です。

そのために、研究テーマがなんとなく定まってきた、まさにこの段階で、より自分に対して確信を持って進めるような心の準備とでも言うものが必要に思いました。

そこで、出会ったこの本が、とても良書でした。その名も『研究の育て方』です。
著者の近藤克則先生は、医学の教授ですが、本書は、医学以外の社会科学や、私の専門のデザイン学にも共通する研究の育て方を指南してくれる、本でした。

今この段階で、意識して気をつけるべき点を自分なりに言葉にして記しておきます。

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よい研究の条件(第2章)

いざ研究を始めようとテーマが決まってきたところで、本当にその道に進んで大丈夫なのか、そもそも良い研究なのかどうか、批判的に吟味することが大切です。

質の高い研究の2条件:①有用性と②方法の妥当性

特に、有用性について以下のように述べられています。

英語論文での発表を目指すものは、海外の読者や研究者であっても答えを知りたいと思うような、有用な研究を構想しなければならない研究の有用性や意義を決めるのは、リサーチ・クエスチョンである。だからよい問いを発することが重要である。

また、妥当性については、2つの観点から批判的に吟味が必要です。内的妥当性と外的妥当性です。そのためにシステマティックレビューが重要であることも説かれています。

関連記事>>良質なリサーチ・クエスチョンとは?迫真性、挑発性、継続性がある問い。

よい研究計画の3条件:①意義、②新規性、③実現可能性

質の高い研究の条件を満たす研究テーマが見えてきたら、次は、良い研究計画に磨いていく必要があります。

第一に、意義です。この意義をどのように見出すかが、研究のモチベーションに大きく作用します。私の解釈では、この意義付けのためには、多様な観点からこのテーマを問い直してみることが必要と思います。学術的な意義、政策的な意義、ビジネスにおける意義、組織にとっての意義、個人にとっての意義など、様々なレベルで意義を問い直し、言語化してみることが重要に思います。

第二に、新規性です。正直に言って、この『新規性』というのが最も厄介な概念だと思っています。何をもって『新規』なのか、見定めることが非常に難しいからです。そして、このことが、研究を進める上で非常に不安感のもとになっています。

で、それのどこが新しいの?

アカデミックジャイアンツたちに、こうきかれて、答えられると言い切れるでしょうか?単に、自分の勉強不足だとしたら?そんな不安が常につきまといます。今回、この本を読んでよかった、とおもったのは、これらの条件をしれただけでなく、さらにこの『新規性』についても理解が進んだことです。

第三に、実現可能性です。これは、理解できます。3〜4年で仕上げないといけないのに、盛り込みすぎることはよくあります。あれもこれもと意欲的に考えているうちに、実際には10年かかるテーマになってしまったり、そもそも今のリソースや技術、情報のアベイラビリティから無理だったりすると、研究としてはなりたちません。

研究テーマの育て方(第5章)

この視点を今から持つことは非常に大切に思います。なぜなら、博士課程の学生は、自分の博士論文を書くことに目が行きがちで、その先の展開まで視野にいれることは難しいからです。でも、今のうちからこれを持つことは本当に重要だと教えられます。

研究者になるための条件の1つが、10年かけて追求し数本〜数十本の論文がかける、下位〜中位のテーマ(リサーチ・クエスチョンのかたまり)を設定できることである。

そして、『研究テーマの大きさと階層構造』を意識することが大切と教えられます。

背景と文献レビュー(第8章)

ここは、今も継続している文献レビューの活動ですが、その要点を端的にまとめてくださっています。

まず、「背景」として、①取り上げる課題の重要性や意義、②先行研究でわかっていること、③重要なのに先行研究ではわかっていないこと、つまり新たな研究で明らかにすべきことを示す

また、レビューの段階を3段階で分けてしめしてくれています。

勉強の段階、批判的吟味(検討)の段階、論文執筆の段階です。

それぞれの段階を意識して、自分が今何をしているのか、どのように勧めていけばいいのかを理解することは、単にリテラチャーレビューをする、という以上の確実感があります。

また、この本はコラムが非常に充実しています。感動したのは、ピクセル(画像)によるたとえ話。

論文を書くときには、その論文で検討する1つか2つのピクセルが白か黒か分かると、5か6か識別できるなどと、検討するピクセルの重要性を述べるべきである。

取り扱う現象やテーマの全体像を明らかにすることは、当然ながら一つの論文ではできません。できないのだけれども、このリサーチ・クエスチョンを立てて、答えをだすことで、全体を理解する上で非常に意味がある、ということを述べるということです。全体と部分の理解が非常にクリアになる指摘です。

もやもやが少し晴れました。ここから少し自分のテーマもブラッシュアップしていけそうです。

Ciao, Grazie !

 

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