デザインに理論は必要なのでしょうか。
この問い自体、非常に議論を呼ぶものでしょう。
あるデザイナーやデザインの研究者は、デザインに理論はいらないというでしょう。デザインとは、感性であり、芸術であり、経験が大切だからだと。
デザイン学者のKen Friedmanは、実際にこう述べています。
Some designers assert that theory-based design, with its emphasis on pro-found knowledge and intellectual achievement, robs design of its artistic depth.(Friedman(2003))
理論に基づいたデザインは、深い知識と知的成果を重視し、デザインの芸術的な深みを奪うと主張する人もいると。
もちろん、デザインには芸術的な深みが必要です。イタリアの美術家でデザイナーのブルーノ・ムナーリが、著書「芸術家とデザイナー」にて、芸術とデザインを区別して述べていますが、両者は常に比較され、場合によっては混同されることもしばしばです。ときにその近似性ゆえに、デザインの持つ芸術的な側面ばかりが強調されることで、このような主張にも行きつくことでしょう。これは本当に人によって様々に意見が分かれるところです。
目次
理論とは何か?
そもそも、理論とは何でしょうか?この問いだけでも非常に深くなりますので、ここでは非常に簡単な引用にとどめます。
In its most basic form, a theory is a model. It is an illustration describing how something works by showing its elements in relationship to one another.(Friedman(2003))
理論とは、一番キホンは、モデルです。
異なる要素が、互いにどのように関係しているかを示す記述であり図解です。
これは、社会科学や自然科学では当然のように捉えられています。
しかし、デザインの分野では、「デザイン理論」の研究というのものが、まだまだ発展しなければならないという状況であることを、フリードマン自身も認識しており、その開発の重要性を指摘しています。
背景には、先にみたデザインについての考え方や背景、歴史が深く関係していることは想像にかたくないでしょう。
なぜ、デザイン理論が必要か?
ケン・フリードマンは、デザインのそのような側面を認めつつも、こう述べています。
“My view is that art and science both contribute to design.” (Ken Friedman(2003))
また、次のポイントは、デザイン理論の必要性を端的に表現しています。
Theory-rich design can be playful as well as disciplined. Theory-based design can be as playful and artistic as craft-based design, but only theory-based design is suited to the large-scale social and economic needs of the industrial age. (Friedman(2003)).
要約すれば、理論にに富んだデザインは、鍛錬されたデザインと同様に遊び心も芸術性もあるが、産業時代の大規模な社会的・経済的ニーズには理論に基づいたデザインしか向いていないと。
デザインが、社会的・経済的なニーズに対してもっともっと貢献していくことを目指すならば、デザイン理論の開発・発展が重要であることを、ケン・フリードマンから教えられます。
Ciao, grazie!
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デザイン理論について、もう少し知りたい方はこちらもどうぞ。
https://yasuyukihayama.com/kees-dorst-frame-innovation/
参考文献:
Friedman K. (2002), “Theory construction in design research”, in Common Ground, J. Shackleton and D. Durling, Eds., Staffordshire University Press, Stoke-on- Trent, pp. 388-413
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