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「デザイン・リサーチ・プロトタイピング」新たな知のフロンティア探索の手法

デザイン学研究

学術的リサーチの新たなフロンティアを探索・開拓する手法として、「デザイン・リサーチ・プロトタイピング」という手法(教育法)があります。

これは、サマースクールの集中講座でデザイン学PhDのリサーチャーの学生向けに実施された手法です。

アカデミックリサーチの営みが、「知識の創造」を目的とするものであるならば、その方法自体も新たに開発できないだろうかという、大学の野心的な取り組みの一つです。

知識創造とは、科学的な営みであり、デザイン学もそうあろうとする部分があるものの、一方で、デザインが持つ本源的な価値(探索的(必ずしも科学的というわけではない))をアカデミックリサーチにも意図的に反映させようとする実験的な試みとしてとても興味深いです。

Specutalive Designの流れを組んだ手法として開発されつつあり、これはデザインリサーチの新しい可能性を秘めたとてもおもしろい取り組みだと感じています。

目次

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Prototyping :プロトタイピングキーワード

活動の起点となるのは、プロトタイピングキーワードです。

といっても、単なる思いつきやひらめきで言葉遊びをすればよいというものではありません。

ポイントは、あるリサーチストリームにおけるリサーチギャップに対する、プロトタイピングキーワードであるということです。

ここが非常に難しいところで、ほとんどの場合ここで失敗します。。しかし、それも「プロトタイピング」ということで、リサーチギャップの捉え方そのものをリフレーミングする(問いそのものをリフレーミングしていく)ことが一つの狙いとも言えるでしょう。

思い切ったキーワードをつくるというよりは、次の理論的背景をいかに汲み取って、かつ、含意に富むキーワードの開発ができるか、という点がポイントになるように思います。

私は次のステップの理論的バックグラウンドとの関係性を意識してワードを開発しました。

Theoretical background : 理論的バックグラウンド

次は、理論的バックグラウンドです。

端的に言えば、そのキーワードの根拠・裏付けです。

なぜ、そのキーワードをコンセプト化することが効果的なのか。

どの文脈でのキーワードなのか。

キーワードの理論的背景と結びつきはどのようなものか。

このような問いに答えなければなりません。

これがまた非常に難儀です。なぜでしょうか?

例えば、「パイナップルグレープフルーツペン」という新しい言葉(概念・コンセプト)を生み出そうとしたとしましょう。

そのとき、学術的には、「パイナップル」と「グレープフルーツ」と「ペン」についての論拠を述べなければなりません。

そして、それが合わさったときの新しい意味とその意義を述べなければなりません。

一つの言葉の定義を引用すること自体、実は非常に難儀なのですが、2つ、3つとなってくるともはやカオスの領域に入ってきます。

Research Question : リサーチトピック・リサーチクエスチョン

最後は、リサーチトピックとリサーチクエスチョンです。

これは通常のリサーチと同様です。

今回、博士課程ならではだと感じたのは、このプロトタイピングワードと、自分個人のリサーチトピックとの関係性を述べよ、という挑戦的な課題です。

これは非常に「挑発的」です。このようにリサーチ設計そのものを練り変えていいく、リフレーミングしていく活動というものは、通常は混乱と混沌を導くものですが、それを求めてくるところがデザイン学独特かと思います。

新しい知識創造のアプローチの行方は!?

これは、非常に挑戦的かつ挑発的な営みです。

科学に対する一つの挑戦かもしれません。

デザインは科学なのか?こういった議論も背後にはあるように思います。

デザイン学は、その存在意義やアイデンティティを見出すために多くの時間を割いてきました。そして今もその道半ばです。

他の学問分野からは、揶揄されることもあります。知識の基盤が脆弱だからでしょう。理論もなければ、すべての理論的アプローチは他の学問からの「借り物」であるということもあるかもしれません。(デザイン学のコミュニティでも、それは自覚しています。独自の方法論なんて、Culture probeくらいしかない、と言われたりもします。。。(笑))

それでも、他の学問とは独立して存在する意義というものは、何なのでしょうか。
数十年前、職業訓練校としての「デザイン専門学校」ではなくて、知識を創造する機関として、大学はPhDコースを作りました。イタリアでは、建築学との歴史的な繋がりがありつつも、独立した学問の体系を作るべく、学部から作られました。

この不確実な世の中だからこそ、新たな知の営みというものが求められてくるのではないか、「ill-defined problem」に取り組んできたデザインの挑発的・挑戦的な取り組みです。

Ciao,grazie!

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